食道がんで「手術できない」と言われたときの対処方法

がん

こんにちは、コタロウです。地方の基幹病院で食道外科を中心に診療しています。

こんな質問を受けることがあります。

患者さん
患者さん

食道がんで、外科の医者に「手術できない」と言われた。

どうしたらいいのか分からなくって。。

外科医として、「手術できない」と患者さんに申し上げるときは、いつも断腸の思いです。もちろん、患者さんはその何倍もショックを受けておられるでしょう。

しかし、「手術できない」と言われても、あきらめるのにはまだ早い場合や、手術以外にできることが残されていることもあります。

この記事では、食道がんで「手術できない」と言われたときに、考えられる病状と対応策について解説します。

食道がんは、悪性度が高く手ごわい病気ですが、なにか希望が持てる治療の選択肢が見つかるかもしれません。参考にしていただければと思います。

食道がんで「手術できない」3つの理由

食道がんで「手術できない」理由として考えられるのは以下の3つです。

  1. がんが切除できない臓器に浸潤しているため
  2. 遠隔転移があるため
  3. 手術に耐えられない体力のため

順番に解説します。

がんが切除できない臓器に浸潤しているため

食道がん気管浸潤

食道は縦隔という胸部に奥深い場所にあり、周囲を気管や大動脈、心臓などの重要な臓器に囲まれています。そのため食道がんが進行してくると、それらの合併切除に浸潤してしまい、切除できなくなってしまいます。

がんの手術は、がんを物理的に切除して治す治療ですから、切除しきれなければ、残ったがんはすぐに増殖して進行してしまいます。

このため、切除できない他臓器に浸潤してしまったら、「手術できない」と判断せざるを得ません。

遠隔転移があるため

肝転移

血行性転移(肺や肝臓に多いですが、血液中に入り込んだがん細胞が原因なので、どこにでも起こり得ます)や、遠くのリンパ節に転移があると、がんが、いわば全身病になっていると見なされます。この場合、たとえ転移先のがんを切除しても、すぐに他の場所にがんが出てくるため、手術できないと判断します。

これは、同じ消化器がんでも、大腸がんのときとは全く違う考え方です。大腸がんは、たとえ肝転移や肺転移があっても、切除して治ることがあります。食道がんや膵がんのような悪性度が高いがんでは、血行性転移は根治のための切除の対象にはなりません。

手術に耐えられない体力のため

食道がんの手術は、消化器外科手術のなかでも最も大きく、身体に与える負担も相応なものになります。たとえ患者さん御本人が希望されたとしても、手術に耐えられないくらい体力が衰えている年齢や病状の方には、外科医は手術を勧められません

「手術できない」と言われたときにできること

では、「手術できない」と言われたときに、できることはないのでしょうか。そんなことはありません。進行した食道がんの治療は確かにむずかしいですが、あきらめずに戦うことは可能です。

「手術できない」3つの理由それぞれについて、できることを順番に解説します。

他臓器浸潤のため手術できない場合にできること

化学放射線療法

放射線治療装置

放射線治療は、手術よりもがんを治す力が劣る反面、手術で取れないほど周囲に浸潤した食道がんを根治できるポテンシャルがあります。

もちろん、手術できない程進行したがんは、放射線治療でも難しいですが、決してチャンスが無くはないです。抗がん剤と同時におこなう放射線治療を根治的化学放射線療法といいます。

また、放射線治療がある程度効果が出たところで、手術可能になる可能性もあります。

セカンドオピニオン

もし他臓器浸潤が原因で「手術できない」と言われたのなら、セカンドオピニオン外来を希望する価値はあるかもしれません。

外科医の判断が100%間違ってないとは言い切れないからです。

ここだけの話ですが、他院で切除不能と言われて受診された患者さんに、

コタロウ
コタロウ

これならなんとか切除できると思います。

とお話したことは何度か経験しています。実際に手術させていただいて、今も元気にされている方もいらっしゃいます。

比較的専門性の高い食道がんの手術は、充分な経験を持った外科医でないと判断しきれない場合もあります。

こちらの記事も参考にして、病院を変わることも検討してみるべきかもしれません。

たとえば私が「本当に手術できないのか確かめたいから、セカンドオピニオン外来に行きたい」と患者さんに言われたら、正直少しイヤです。しかし、拒否することは絶対にありません。少しでも疑問があればはっきりさせないと、それこそ信頼関係が崩れますし、なにより患者さんご自身の命なのですから。

遠隔転移の場合にできること

残念ながら、現代の医学では、治癒できる治療方法は基本的にありません。抗がん剤による治療(化学療法)が中心になります。私のような外科医はできることがあまりなく、腫瘍内科の専門分野になります。

食道がんは比較的希少な病気ですし、有効性が確認されている抗がん剤は、比較的種類が少ないです。しかし新たな抗がん剤は日進月歩で開発されています。最近では、肺がんなどに続いて、最新の抗がん剤である免疫チェックポイント阻害剤が保険収載(国の健康保険で使えるようになること)されました。これまでの抗がん剤では見られなかった効果が得られている患者さんもいらっしゃいます。

免疫療法と言っても玉石混交で、自由診療のがんペプチドワクチンや樹状細胞ワクチン療法のように、なんのエビデンス(根拠)もない免疫療法もあり、これに引っかかって貴重な時間とお金を無駄にしないようにご注意ください。

免疫治療についての正しい情報は、こちらを参照いただくと良いと思います。

国立がん研究センター 「免疫療法 もっと詳しく知りたい人へ」

手術に耐えられない体力の場合にできること

次善の策として、化学放射線療法で根治を目指すことになるでしょう。化学放射線療法も身体に負担があるため、ある程度の体力は必要ですが、手術ほどではないです。

手術を目指すなら、栄養療法やプレハビリテーションと呼ばれる術前の理学療法によって、手術可能な体力をつけることになります。どのくらいの体力向上が見込めるか、主治医と管理栄養士、PT(Physical Therapist 理学療法士)さんと、よく相談してください。

まとめ

・食道がんで「手術できない」理由は、

 1.がんが切除できない臓器に浸潤しているため
 2.遠隔転移があるため
 3.手術に耐えられない体力のため

・他臓器浸潤や体力不足が原因なら、次善の策として科学放射線療法が勧められる。

・遠隔転移が原因なら、抗がん剤(化学療法)中心の治療になる。

参考になれば幸いです。

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