「医学博士」を信用してはいけない理由

コラム

こんにちは、外科医のコタロウです。地方の基幹病院で外科医をしています。

最近のコロナ禍で、毎日テレビでは沢山のコメンテーターの方々が登場して、見解を述べておられます。トンデモ発言が目立つケースもありますが、その人達が「医学博士」の肩書を持っていることを、発言の裏付けのようにしていると感じることがあります(あくまで個人の感想です)。

実情をよく知っている者からすると、

コタロウ
コタロウ

そんなに信頼に足る資格じゃないですよ

という気持ちになります。

ちなみに、かくいう私も医学博士を取得しています。外科手術だけでは治せない病気(主にがん)を治すための研究をしたかったからです。結果的に、大きな成果は挙げられませんでしたが、京都大学から学位をいただいていますので、医学博士になることの難易度や意味合いを分かっているつもりです。臨床医であり、学位(医学博士)も取得しているからこその感想です。

私の学位記

今回の記事では、私が「医学博士の資格と発言の信頼性は無関係」と考える理由についてお話します。

医学博士とは

正確には、博士(医学)と表記すべきだそうです。一般には「医学博士」が浸透しています。

医学博士:1887年(明治20年)制定の学位令において、文部大臣より授与される5種類の博士のうちの1つとして定められた。1991年(平成3年)の学位規則改正で、「博士(医学)」に名称変更された。大学院の医学系の研究科で博士課程を修了して、博士論文の審査(通常、公開での発表会)に合格するか、博士論文を大学の公聴会に提出して、博士号を取得します。

(ウィキペディアより抜粋、改編)

医師は「Dr.」ですが、名乗れる称号として「MD」と「Ph.D」もあります。

MDは、Doctor of Medicineで、医学部を卒業した人が名乗れる名前で、いわゆるお医者さんのことです。Ph.Dは、Doctor of Philosophyで、いわゆる博士号を取得した人のこと。通常は大学院で4年間研究して、取得します。

ちょっとややこしいですが、医師が医学博士を取得すると、MDとPh.D両方を名乗れるようになります。

医学博士でも信用してはいけない4つの理由

冒頭でのセリフのとおり、私は医学博士だからといって、医学的なコメントを鵜呑みにしてはいけないと考えています。その理由をお話します。

  1. 医局制度の弊害だから
  2. 博士の質が大学によってぜんぜん違うから
  3. 専門分野以外はド素人だから
  4. 医師でなくても取得できるから

医局制度の弊害だから

本来、医学博士は、医学の発展のための意欲を持った若者が、大学院で4年間、研究を行なった結果であるべきです。しかし、日本では大学の医局制度に利用されている一面があります。

今だに、日本の医療は「医局制度」が中心です。大学教授をトップにして、たくさんの医局員を束ねて、関連病院の人事をコントロールしています。

ほとんどの公立病院、大病院では、部長以上になるためには博士号取得を条件に挙げており、また医学博士の資格は大学でしか取れません。そのため、多くの勤務医が、大学医局から離脱できないという構造になっているのです。

本来の「研究のための大学院」が、「医局制を守るため」にすり替えられているとも言える訳で、本当に研究がしたくて大学院に進む人は少なくなり、その結果、医学博士の質の低下は免れないと考えます。

博士の質が大学によってぜんぜん違うから

博士号は、各大学で審査されます。ところが、大学によって博士号の取得のしやすさが全く違うのです。

私が4年間在籍していた京都大学では、「英語論文でインパクトファクター合計10点以上が基準」と言われていました。もちろん明文化はされていませんし、この基準は正直きびしめですが、ある程度納得できるラインだったと思います。4年間頑張っても博士号が取れない人も決して少なくありませんでしたが、成果が出なければ学位を得られないのは仕方ないことではないでしょうか。

ところが、地方の国立大学では、日本語の学内雑誌での論文発表でも博士号が取得できるところも珍しくありません(全てではないです)。同じ博士号でも、取得が困難な大学と容易な大学があるのは制度としていかがなものかと感じます。

このように、博士号の質が大学によってバラバラで、質が担保できていないのが現状です。

専門分野以外ではド素人だから

大学院では、もちろん医学の研究をするわけですが、かなり専門的な内容になります。逆に言うと、専門分野以外のことに特別詳しくなるわけではありません。

私は大学院では、膵がんの発がんメカニズムの研究をしていました。その分野では、なにを聴かれても(その当時としては)最先端のお話ができた自信があります。

それ以外のことは、ほぼ素人です。公の場で自信をもって解説できるような知識も経験も持ちあわえていません。

医師でなくても取得できるから

医学博士は医師でなくても取得できます。誤解のないようにお断りしておきますが、医者でないこと自体には、なんの問題もありません。”学術的な”資格であり、医学研究で成果を挙げた結果が医学博士です。

しかし、その方たちは、臨床的な裏付け(実地の医者としての経験や知識)がないことは事実です。むしろ医師の資格を持たない医学博士の方が、テレビで無責任な発言をしている頻度が高いとも感じます。まるで「医学博士」だから正しいと、周りに言い聞かせているかのように。

少なくとも、新型コロナウイルスを診療したこともない人が、医学博士だからといって、現場の非難をする構図はおかしいと感じています。

念のため補足

医学博士や医学部大学院での研究自体が意味がないと言いたいのでは、決してありません。医学博士という肩書にはたいして意味はないので、盲信してはいけない」ということをお伝えしたくて記事を書きました。

医局制度の弊害といいましたが、実際には、(私もそうでしたが)研究を進めることでしか治せない病気に立ち向かう強い気持ちを持った人達が、大学院に進んでいます。自分でいうのもおこがましいですが、医師になるくらいの地頭を持つ人達が、なかば強制的に大学院に進む制度があるからこその医学の発展という側面もあるでしょう。医学博士はそのステップですから、とても意味のある資格と思います。

世界的にインパクトのある研究を成し遂げ、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥先生は良い例でしょう。

まとめ

・医学博士だからといって発言を真に受けてはいけない。
・理由:1.医局制度の弊害だから
    2.博士の質が大学によってぜんぜん違うから
    3.専門分野以外はド素人だから
    4.医師でなくても取得できるから
・医学研究は、人類の進歩のために必要不可欠で、医学博士に反対するつもりはありません。

以上、なにかの参考になれば幸いです。

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