医者はカルテになにを書いてるのか 〜カルテの中身〜

医療

こんにちは、コタロウです。

医者のカルテには、どんなことが書かれているのか、興味が沸きませんか?

カルテは「診療記録」ですから、もちろん患者さんの病気の状態、経過について書かれています。ときどき「これ君の日記か?」と言いたくなるようなカルテを書いて、指導医から注意を受けている研修医を見ますが、一定の形式に沿って書かれていることが多いです。

カルテ:診療記録。ドイツ語のKarte(診療記録カード)からの外来語。診療を行った場合に遅滞なく記載することが、医師法で定められています。5年間の保存が義務付けられていますが、これは紙カルテ時代の話。電子カルテになった現在は、ほとんどの病院で永久保存されています。

今回は、私たちがカルテにどんなことを記載しているのか解説します。

コタロウ
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実際に病院を受診するとき、どんな情報が必要なのか分かり、診療をスムーズに進められると思います。

ここで言うカルテは、医師が記載する部分のことを指します。カルテには、ほかにも看護記録やバイタルデータ(血圧、熱型、尿量など)、検体検査結果、画像情報などなど、非常に多くの情報が含まれていますが、その部分は含みません。

初診時カルテ

初めて外来を受診して診察を終えたときには、概ね下記のような内容のカルテが完成しているはずです。

  1. 問診…主訴、現病歴、既往歴、内服薬、アレルギーの有無、身長、体重生活歴(喫煙、飲酒など)、家族歴
  2. 検査結果
  3. 診断
  4. 治療方針
  5. 患者さんに説明した内容

要点を解説していきます。

1.問診

主訴…「おなかが痛い」「食事がのどを通らない」など、患者さんの苦痛の訴えです。検診などで病気が分かり、症状がない場合は「なし」になります。

現病歴…今回、病院を受診するに至った経過です。同じ腹痛でも、「いつから」「始まり方(突然なのか少しずつなのか)」「痛みの経過(ずっと痛いのか、ときどき痛いのか)」「他の症状(吐き気など)」などの情報が診断のために重要です。

既往歴非常に大事なのに、情報が不十分になることが多いのがこれです。高血圧、糖尿病、喘息といった、いわゆる持病や、過去にどのような治療(手術も含みます)を受けたことがあるか。時期や受診した医療機関の情報もあれば、必要に応じて診療情報を依頼することもできます。

内服薬…前項の既往歴とともに、これも意外に把握していない患者さんが多い項目です。薬が原因の病気も多いですし、抗凝固薬(血液が固まりにくくなる薬、脳や心臓血管系の病気で処方されます)を飲んでいると、手術時の出血が問題になることがありますから、できたら休薬になります。正確に把握するために、「くすり手帳」の持参は是非お願いしたいところです。

アレルギーの有無…CT検査のためによく使われる造影剤は、比較的アレルギー反応を起こしやすいですから、この情報は大切です。抗生物質もアレルギーを起こすことがありますから、アレルギー体質の方は絶対にお知らせください。

生活歴…これまでどのくらい喫煙してきたか、飲酒しているか、ふだんの生活様式などです。病気の原因と関連していたり、治療の際のキャパシティ(治療を受けるだけの体力があるかどうか)の判断基準になります。

家族歴…世の中には、遺伝性の病気や、環境による病気も多いです。家族がインフルエンザになっていたら、同じ病気である可能性が高くなります。また、悪性高熱症といって、全身麻酔に致命的な病気があり、これのために血縁関係の方で全身麻酔中に亡くなった方がいないかを麻酔科受診時には必ず聴取する必要があります。

2.検査結果

採血検査や画像検査(心電図、超音波検査、内視鏡、CT、バリウム検査など)をなるべく客観的に記載します。

3.診断

ここまでの問診、検査結果から導き出された診断とプロブレムリストを記載します。

たとえば、「早期胃癌 M, l/c, cT1bN0M0; stage I」という感じです。暗号のようですが、少ない文字数で的確に病状を表現するようにすると、どうしても医学的な専門用語が多くなります。

プロブレムリストは、「#1早期胃癌、#2高血圧、#3糖尿病…」と、患者さんの問題点を整理して列挙しておきます。

4.治療方針

たとえば「腹腔鏡下幽門側胃切除術が望ましい」と記載します。また、追加検査の予定や新たな処方薬についても書いています。

5.説明した内容

病状と治療方針をどのように説明したか、どんな質問があったか、患者さん(とご家族)の反応はどうだったかなどを記載します。

ここまでが、初診時のカルテ記載内容になります。

思ったより当たり前のことしか書いてないな

と思われたのではないでしょうか。専門の医学用語が多くなりますから一般の方がひと目で理解できるものではありませんが、後から見て、誰でも分かるように簡潔に要点を書くべき公文書ですから、そんなにむずかしいものでもありません。

カルテを整理して書くのはたいへん骨の折れる作業です。実際には、テンプレート化された雛形を準備していて、随時書き込んでいくスタイルで運用しています。それでも上記の情報をきっちり記載しておくのは、非常に手間のかかる作業です。

2回目以降(経過フォロー時)のカルテ

経過の記録は、同じ内容を繰り返しても仕方がないので、違う形式になります。

通常は、上記診断で作成したプロブレムリストについて、SOAP形式で記載します。

  • S (Subjective)…患者さんの訴え
  • O (Objective)…診察所見、検査結果
  • A (Assessment)…医師の診断、考察
  • P (Plan)…治療計画

たとえば、術後3日目の大腸がんの患者さんなら、こんなカルテを書いていますね。

  • S: 大分楽になりました。まだ動くと痛みますね。おならは出ました。
  • O: vital signs: stable(安定)
  •   腹部:ソフト
  •   L/D(血液検査データ): 問題なし
  • A: POD2(post operative day2, 術後2日目の意味)
  •   特に問題なし
  • P: 経口摂取再開
  •   経過フォローしていく。

患者さんに準備しておいてほしいこと

病院を受診するとき、上記の問診の部分は、全て患者さんから聴取できる情報です。実際に、「問診票」にあらかじめ記入してから診察になるのが普通ですね。ところが、問診票をきっちりと記入できているケースは稀です。特に既往歴と内服薬は、少し複雑になると本人さえも把握できていなかったりするので、普段からまとめておくと良いと思います。

できたらスマートフォンのメモや、実物のメモ帳に整理しておくといざというときに役立つでしょう。もちろん「くすり手帳」はご持参ください。

まとめ

  1. 初診時カルテには、問診(病歴、既往歴、内服薬など)、検査結果、診断、治療方針、説明内容が記載される。
  2. 経過フォローのカルテにはSOAP形式で、経過が記載される。
  3. 問診で訊かれること、特に既往歴、内服薬(くすり手帳)だけでもまとめておくと、いざというときに役に立つでしょう。

コメント

  1. 患者A より:

    コタロウ先生、こんにちは。
    ブログ、どれも興味深い内容で
    読んでいて楽しいです。

    カルテのことは自分の周囲の人達の間でもよく話題になるんですよ!
    外来診察の時、患者側から良くも悪くも全部見えているため、非常に気になるのです。

    自分の話した言葉がそのまま入力されていることにずっと疑問を感じていたのですが、
    それは、一番最初のS、だったことが知れてすっきり?しました。

    それでも、病院によって使っている電子カルテが違うのでしょうかね。

    シンプルに症状だけが入力されているものも見かけますが、
    逆に「そんなことまで入力するの?」と思うような内容まで打ち込んでいることに驚く時もあります。
    (手術をした病院はとても詳細に入力している様子)

    難しそうなカルテ入力ですが、
    コタロウ先生ならば、パソコンに釘付けにならないように等、
    患者のために気をつけていらっしゃるのだろうな、と思いました。

    • コタロウ より:

      コメントありがとうございます。
      読んでくれてる人いるのかな?とか思いながら作っておりますので、とても励みになります。

      電子カルテは、NECと富士通の2大派閥があって、ほとんどはどちらかですが、細かい仕様は病院ごとに違います。
      正直言って、カルテの記載の仕方は医者によって大分個性というか性格が出ます(笑)。
      きっちりとしたカルテを書ける人は、我々医者のなかでも評価されてる人であることが多いです。

      私はブラインドタッチが得意なので、なるべく患者さんのお顔を見ながら話しています。
      本当は話が終わってから入力する方がベターなんでしょうが、そこまで時間が取れないのと、細かいことを忘れてしまうから、お話しながらカタカタ入力していますね。
      失礼します、とか言いながら。。

      今後共よろしくお願いいたします。

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