食道がんになったときに選ぶべき病院 〜専門医が考える6つの基準〜

がん
患者さん
患者さん

食道がんと診断されたんだけど、どこで治療を受けたらいいでしょうか?

紹介されたとおりでいいのか不安です。

食道がんは、進行が早く予後が悪い(治りにくい)、やっかいながんのひとつです。早めに適切な治療を開始するべきなのは言うまでもありません。結論から言うと、

コタロウ
コタロウ

外科、消化器内科、放射線治療科、腫瘍内科、頭頸部外科の専門医がいる、自宅から通える病院を探しましょう。

以下に、詳しく解説します。

日本食道学会には、一般の方用に「食道がん治療を行なう病院一覧」を公開しています。掲載されている病院は一定の水準を保っていると考えてよいですが、それではこの記事の意味がありません。

ここでは、さらに踏み込んで、長く前線の病院で食道がん診療にあたってきた医師しか分からない情報をお伝えします。この記事を読むことで、食道がんになってしまったとき、医療機関をどのように選ぶべきか、理解できると思います。

食道がんになったときに選ぶ病院 6つの基準

  1. 食道外科専門医がいる(ロボット手術がベター)
  2. ESDができる消化器内科医がいる
  3. 放射線治療医がいる
  4. 腫瘍内科の専門医がいる
  5. 頭頸部外科(耳鼻咽喉科)がある
  6. 自宅から通院できる

食道外科専門医がいる(ロボット手術がベター)

私が外科医だから言うのではありませんが、食道がんに限らず、消化器がん治療の中心は外科手術です。食道がんも、手術が大きな選択肢であることは間違いありません。手術治療が歴史的にもっとも多く行われてきたこと、他の治療法と比較して、中等度の進行食道がん(進行度1〜3)に対して、治療成績がもっとも良いことが理由です。

言うまでもなく、外科医の良し悪しは、術後の結果に直接影響します。食道がんの手術はその最たるもので、外科医の技量によって結果が大きく変わる病気と言っていいでしょう。そのため、良い外科医がいる病院にかかるのが望ましいのは言うまでもありません。

これまでの調査で、術後短期手術成績(手術死亡と術後合併症)、長期手術成績(5年生存率)ともに、食道外科専門医のいる専門施設の方が成績が良いことが示されています。

Satoru Motoyama, Esophagus Vol.17, p41-49, Jan 2020

Satoru Motoyama, Esophagus Vol.17, p141-148, Oct 2020

特に日本でも2019年から導入されたロボット支援手術は、食道がん手術にとても効果的です。ロボット手術については他記事でも触れました。

現場の最前線にいる外科医として、食道がんの手術を受けるなら、ロボットで手術できる施設を強くお勧めします

日本食道学会では、食道外科専門医名簿を公開しています。一定の技量を持つ専門医の資格として、参考になると考えます。

しかしこれだけでは、ロボット手術ができるかどうか不明です。安全な普及のために、ロボット手術には、プロクター制度という指導的立場の食道外科医を日本内視鏡外科学会が認定しています。2021年2月時点で、27名しかいません。こちらを参照すれば、ある程度ロボット手術に習熟した食道外科医を探す助けになると思います。

日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術認定プロクター

ESDができる消化器内科医がいる

非常に早い段階で発見された食道がんの治療は、粘膜下層剥離術ESD(Endoscopic Submucosal Dissectionという内視鏡治療が行われます。そのため、早期がんの場合は、内視鏡治療を行なう消化器内科医が充実している病院が望ましいでしょう。日本食道学会では、内視鏡治療を行なっている病院の一覧を公示しています。

ただし、ここで紹介されている病院は、食道ESD偶発症全国調査に協力している施設です。ここに挙げられた病院はいずれも信頼できる専門施設でしょうが、ここまで厳選しなくても、ESD治療は、消化器内科医のいる病院ならどこでも施工可能でしょう。

放射線治療医がいる

胃がんや大腸がんなど、他の消化器がんと較べて、食道がんは「放射線治療がよく効く」病気です。初回治療でも再発治療でも、化学療法(抗がん剤)や手術と組み合わせて放射線治療を行なうこともあります。放射線治療を行なうためには、放射線治療の専門家がいる施設が望ましいと考えます。いわゆる「放射線科」は、「放射線診断科」を指すことが多く、ここでお話している「放射線治療科」とは異なります。

放射線治療を行なうためには、照射のための設備を維持することと同時に、放射線治療専門医が必要ですが、両方を確保できている病院は限られています。日本放射線腫瘍学会JASTROでは、安全かつ高精度の放射線治療の基準を満たす施設を認定しています。

腫瘍内科の専門医がいる

腫瘍内科は比較的新しい診療科です。化学療法(抗がん剤)治療を専門的に行なっています。

食道がん治療のなかで、抗がん剤治療は、

  1. 進行・再発食道がん(根治治療がむずかしい状態の食道がん)の治療
  2. 化学放射線療法、術前化学療法(放射線治療、手術の補助的役割り)

で用いられ、重要な位置づけです。ひと昔前までは外科医がや内科医が、本来の業務の片手間にやっていた抗がん剤治療ですが、専門の細分化が進んだこと、治療方法の選択肢が増えて複雑になったことから、腫瘍内科医の需要が増えてきました。

最近のトピックスとしては、免疫チェックポイント阻害剤が食道がんでも使われ始めました。まだまだデータが出揃っていませんが、個人的には劇的に効果が出た方を経験しています。今までの抗がん剤以上の効果が期待されています。

腫瘍内科の常勤している病院については、書く病院のホームページから確かめていただく必要があります(がん薬物療法専門医の資格はありますが、腫瘍内科医以外で取得している場合が多く、専任しているかどうか不明なためです)。

頭頸部外科がある

食道がんは消化器疾患で、消化器外科が治療の中心になるのは前述のとおりです。しかし、頭頸部外科(耳鼻咽喉科が担当している病院もあります)と関連が強い病気でもあります。その理由は以下のとおりです。

1.術後の嚥下機能評価やリハビリに協力が必要です

2.頸部食道がんのとき、消化器外科と共同で手術する

3.重複がんとして、咽頭がん、喉頭がんが多い

このため、頭頸部外科の専門科がいる施設で治療を受けることが望ましいです。実際、私も頭頸部外科の医師達とサポートし合いながら診療しています。外科手術が主戦場になる外科医にとって、実は消化器内科、放射線治療科、腫瘍内科以上に関わりが深い診療科かもしれません。

自宅から通えること

食道がんの治療は、長丁場になることが多いです。治療には体力が必要ですから、通院で疲れてしまっては治療に支障が出る恐れがあります。

また、食道がんは治療がむずかしい病気です。残念ながら再発したり、重複がん(他臓器に新たにがんができること)ができたりすることも珍しくありません。通院が気軽に出来ないと、対応が遅れがちになります。

このような要因から、自宅からの通院に無理のない病院での治療が望ましいです。上記1〜5の条件を満たす病院が近くに見つけられないこともあるかもしれませんから、絶対にとは思いませんが、できるだけ近くの病院が望ましいです。短期間の治療で解決する病気ではありません。

まとめ

以上、私が考える「食道がんになったときに病院を選ぶ6つの基準」について解説しました。

  1. 食道外科専門医がいる(ロボット手術がベター)
  2. ESDができる消化器内科医がいる
  3. 放射線治療医がいる
  4. 腫瘍内科の専門医がいる
  5. 頭頸部外科(耳鼻咽喉科)がある
  6. 自宅から通院できる

食道がんの治療は、外科医だけで行なうものではなく、様々な診療科が協力していく必要があります。更に言うと、リハビリチーム、栄養管理士、薬剤師、そして看護師も含めたチームで戦っていく必要があります(これらの部署は、上記の条件を満たす病院であれば充分に整えられているはずです)。

後悔のない病院選びをして、しっかり治療していただくための参考になれば幸いです。

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