「後医は名医」になる3つの理由

コラム

私は、地域の基幹病院、いわゆる「最後の砦」の立場にある病院に勤務しています。そのため地域の他の病院から患者さんを紹介いただくことが多いのですが、無事に緊急手術を終えた患者さんから、こんなことを言われたことがあります。

患者さん
患者さん

昨日行った病院では、ただの便秘って言われた。痛みが続くので、心配になってこっちにきたら、すぐ虫垂炎と分かって手術してくれた。助かりました。

患者さんは、我々の病院の方が優秀で、昨日行った病院の医師はヤブ医者だと信じてしまったようです。

たしかにそうなのかもしれませんが、患者さんの言うとおり「昨日診た医者はけしからん」と考える医師は少ないんじゃないでしょうか。大半の場合、前医もその時点でのベストの診療をしていたと考えられます。

どういう意味か、分かりにくいですね。これから理由をお話します。

この記事を読めば、病院を受診する際に、後で診る医師がいかに有利か理解出来るようになります。病院受診の際の考え方が少し変わるかもしれません。

「後医は名医」

医療関係者のなかでは、いろんな言い伝えがあるのですが、そのひとつに「後医は名医」というものがあります。大病院に勤めているイキりがちな研修医やレジデントが、紹介医や前医(ここに来る前に受診した医師)のことを、

イキリ研修医
イキリ研修医

あんな状態なのに診断できないのなんて、ダメな医者だな

なんて言ってることがあり、そのたびに注意・指導してきました。

コタロウ
コタロウ

「後医は名医」って言葉知ってる?

他院の医者の悪口言うのは100年早いわ!

真っ当な医者の感覚として、後で診察させてもらうのは、2倍ぐらい有利な条件だと思います。

「後医は名医」になる理由

「後医は名医」になりやすい理由を列挙してみましょう。

  1. 情報が蓄積されたところからスタートできる。
  2. 経過が分かる。
  3. 追い込まれた患者さんに対応することになる。

1.情報が蓄積されたところからスタートできる。

「おなかが痛い」と言って救急外来を受診した患者さんを、ぱっと見ただけで診断できる医者はいません。問診、身体所見を元に、採血検査、レントゲン検査などを必要に応じて行ない、総合的に考えて診断していきます。少なくとも前医でどんな検査をしたか分かりますし、場合によってはその結果も出揃っているところから診察できるのは、非常に大きなアドバンテージです。

2.経過が分かる。

これが一番大きな理由です。症状の経過が分かるだけで、診断に大きく近づきます。また前医での治療後の経過が分かることも役に立ちます。

例えば、冒頭の患者さんの場合、便秘と言われて下剤の処方を受けたのに症状が改善していない、(最初は胃のあたりが痛かったのに)徐々におなかの右下の方に痛みが移動してきたといった情報があれば、非常に有益です。

下剤が効かない腹痛ということで便秘らしくないですし、その症状から、虫垂炎を疑うことができるからです。また、昨日の血液検査では正常だった白血球数などの炎症反応が、今日の検査では異常値になっていたかもしれませんし、画像検査の結果も前日とは変化があるかもしれません。

これらは全て後医のみが知ることができる情報です。

3.追い込まれた患者さんに対応することになる。

前医での診療の結果、まだ症状が良くなっていない状態の患者さんは、精神的にかなり心配でしょう。そこから、上述のように有利な立場で診療を開始する医師は、患者さんにとって、頼れる存在に写りやすいと思われます。後医が名医になりやすい要因のひとつでしょう。

メッセージ

我々が「後医は名医」という言葉を使うのはこのような理由からです。

医療を受ける側の方に知っておいてほしいことは、医療は不確実なことが多く、思いがけない経過をたどる場合があることです。そのときには分からなかったことが、時間の経過ではっきりすることは、決して少なくありません。

私は、救急患者さんを診察するとき、「今はこういう判断ですが、経過によっては考え直さないといけない。想定しているのと経過が違う場合は必ず来院してください」と、必ず伝えるようにしています。

まとめ

今日のお話でお伝えしたかったTake home messageは、以下になります。

  1. 医療者のあいだには「後医は名医」という言葉がある。
  2. それほど医療は不確実
  3. 経過を見ることの意味は大きい。

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