胃がん検診でバリウム検査ではなく胃カメラを選ぶべき理由

がん

友人や患者さんからこんな質問をいただくことがあります。

胃がんの検診を受けるんだけど、カメラとバリウムのどっちがいいの?

こちらの記事を読むことで、胃がんの検診で、胃カメラと胃透視のどちらを選ぶべきなのかが分かります。

結論

答えは胃カメラの一択です。

胃がんを早期発見したくて検診を受けるなら、消化器外科医としておすすめできる検査方法は、胃カメラです。追加料金を払ってでも、あるいは自費になってでも、胃カメラによる検診を受けることを強くおすすめします。


その理由を説明します。

それぞれの検査の特徴

バリウム検査(胃透視)

メリット

  1. 歴史があり、やり方が確立されている。
  2. 内視鏡に較べると検査を受けるのがラク
  3. 最新の内視鏡のような設備投資が不要
  4. 技師さんでも施行可能

デメリット

  1. 大まかな胃の形、シワの変形を見る検査なので細かい病気は発見できない。
  2. 検査の制度にバラツキが出やすい。
  3. バリウムで便秘になることがある。

造影剤(バリウム)と胃を膨らませる発泡剤を口から飲んで、胃の形やしわの状態をレントゲンで見ることで、異常を発見する検査方法です。
比較的歴史のある検査です。
その開発の歴史は、柳田邦男の名著「がん回廊の朝(あした)」に詳しく書かれています。昭和30年台頃の国立がんセンターでの医師の苦闘の記録で、実は私が医学部受験に燃えていた頃に影響を受けた本でもあります。当時は画期的な胃がんの検査方法だったことがよく分かります。

比較的設備投資にかかる金額が低く、医師ではなく技師さんが検査を行なえる点でも低コストである点は優れています。しかし、透視で小さな病変を描出するのは難しいです。また検査技師による差がでやすく、きれいな写真を撮って早期癌を見つけるのは、名人芸的な難しさがあります。その結果、検出感度が低い(たとえば癌があっても発見できないことがあるなど)ことが致命的な欠点です。
歴史的に有用な時期もあったのでしょうが、最新の内視鏡の検査精度には遠く及びません。現場感覚でいうと、胃癌が見つかって手術が必要になったときに、透視検査で癌の場所を確認するための道具です(手術するための地図のようなイメージ)。

カメラ(上部消化管内視鏡検査)

メリット

  1. 細かい早期病変が発見しやすい。
  2. 検査を行なう人による差が少ない。
  3. 拡大内視鏡、NBIなど機器の進歩が著しい。
  4. 生検による診断確定が可能。

デメリット

  1. 身体の負担が大きい、しんどい(鎮静で解決可能)。
  2. 喉の麻酔、準備に手間、時間がかかる。
  3. 大きな合併症の心配がある。
  4. 医師(内視鏡医)にしかできない。

胃の検査としてはバリウム検査より後発ですが、胃カメラの検査精度の向上は著しいものがあります。日本のオリンパスなど光学医療機器メーカーの努力により進歩が目覚ましく、より高画質な画像で見ることができるのはもちろん、最近ではNBI(Narrow Band Imaging; 特別な波長の光で見ることにより、早期癌がより見やすくなる検査)もあります。

早期癌(通常光による観察)
早期癌(NBIによる観察)

また生検(癌組織の一部を摘みとって顕微鏡で検査すること)をして、癌の診断を確実にできる利点もあります。

胃透視と較べると、準備に時間がかかり、喉に太いファイバーを通すため、身体に負担の大きい検査ではあります。出血や穿孔といった大きな合併症が起こる可能性は、頻度が少ないながら一定数あります。またスキルス胃がんのように、全体が硬くなるタイプの胃がんは胃カメラで見落とされ、バリウム検査で見つけられやすい場合があります。

まとめ

上記のような両検査の特性から、検診として間違いなく胃カメラが望ましです。


バリウム検査が検診としてまだ行われている理由は、これまでの歴史を踏襲しているだけか、既得権益を守るためか分かりません。行政の怠慢もあるのではないかと邪推しています。もちろん胃透視でも胃癌が見つかることはありますから、全く意味がないわけではありませんが、周囲にいる消化器内科医、消化器外科医でバリウム検査を選択している人はいないと言っていいです。


検診として受けるならば、胃カメラにすることを強くおすすめします。できれば鎮静下(点滴で眠った状態)で検査してくれるところがおすすめですね。

補足

ここでは検診の話でしたが、胃癌については有効な予防方法があります。
リコバクター・ピロリという細菌が胃癌の大きな原因であることが分かっており、抗生剤による除菌治療が予防のために行えます。
これについては別途お話したいと思っていますが、内視鏡検査ではピロリ菌感染も検査できます。その意味でも胃カメラ検査の方が望ましいです。

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