外科手術は専門医の方が安全か?

医療

質問

今度胃の手術を受けるんで病院のホームページを見たら、担当医は専門医じゃないみたい。手術を任せて大丈夫でしょうか?

人気ドラマ「ドクターX」の冒頭では、「群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけを武器に突き進むフリーランスの天才外科医・大門未知子」というフレーズが使われています。正直言って、あの勤務状況(単発の外科手術を請け負うスタイル)で専門医資格を維持できるとは思えないのですが、それはさておき、専門医の資格について、現場の外科医はどのように考えているのか、お話したいと思います。

この記事を読めば、ご自身や家族が手術を受ける際に、担当医の専門医資格についてどう考えたらよいか、理解できるようになります。

外科の専門医とは?

そもそも外科の専門医制度とはどのようなものでしょうか?

医師国家試験に合格した後も、医者は一生勉強です。外科医は座学に加えて、手術の研鑽を重ねていく必要があります。手術の質を担保するために、日本外科学会や日本消化器外科学会などの学会が中心となって専門医制度ができました。学会ホームページで専門医取得者は確認できます(日本外科学会専門医日本消化器外科学会専門医

実は2018年4月から制度変更があり、これまで学会中心だったのが、国の設立した日本専門医機構によって専門医認定が行われるようになりました。本質はあまり変わらないので、細かいところは無視して解説します。

外科の専門医制度は「3階建て構造」です。日本外科学会のホームページに解説がありますが、卒後4−7年目の外科研修を経て外科専門医(1階)となり、さらに3年程度のサブスペシャルティ(消化器外科心臓血管外科呼吸器外科小児外科乳腺外科内分泌外科の6つ)修練を経て、それぞれの専門医(たとえば消化器外科専門医)になります。これが2階です。さらに消化器の場合は、食道外科、内視鏡外科、肝胆膵外科の専門医資格が3階部分です。

  • 1階 外科専門医
  • 2階 消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺外科、内分泌外科の専門医
  • 3階 内視鏡外科医、食道外科、肝胆膵外科

それぞれの分野で十分な手術経験、学術研究(学会発表や論文発表)の実績が必要で、さらに試験に合格する必要があります。

なお、各資格には上位バージョンとして「指導医」があります。これは専門医取得後、一定期間の指導歴で承認される資格で、試験はありません。

専門医に意味はあるのか?

では、専門医を取得済みの外科医なら、安心して手術を任せられるのでしょうか?

答えはYesでもありNoでもあるのですが、上述のような専門医の位置づけを知っている私が患者なら、「専門医を持っているからと言って手放しで全てを委ねられるとは言い難い」と考えるでしょう。一定の手術で研鑽、研究業績を積み上げたうえに筆記試験、口頭試問を突破しているので、ある程度の実力はついていると思います。しかし、誤解を恐れずに言うと、ごく普通の修練施設で長年働いていれば、誰でも取れる資格です。専門医はキャリアの通過点にすぎず、外科手術のスキルを極めていくには、さらに地道な努力、研鑽が必要です。私の意見ですが、ふつうの外科医の現場感覚と思います。

逆に、専門医を持っていない外科医は信用できないのか?というと、これも一概に駄目な医者とは言い切れません。外科医として優秀でも、論文を書くのが苦手だったり、単に面倒で取得してなかったりする人もいるからです。しかし、外科専門医にならないと後輩外科医の指導ができない(指導医までならないと専門医を目指す若手の指導資格が得られない)という切実な問題がありますから、やはり専門医資格を取得するのがふつうです。

専門医制度の3階部分

専門医制度は3階建てと書きました。これまでは2階までの話です。

3階部分は、消化器外科領域では内視鏡外科技術認定医食道外科専門医肝胆膵外科高度技能医の3つになります(リンクは専門医一覧)。これらの資格は、症例経験や学会発表などの研究業績、筆記試験に加えて、ビデオによる手術手技のチェックが必要となります。合格率20〜67%程度の狭き門になっています。

筆者の知る限りでは、3階部分の資格保持者は手術技能を担保できています。もし担当医の資格を気にするのなら、この3つの資格を保有していれば安心できるかもしれません。

まとめ

  1. 外科の専門医資格は特別なものではなく、外科医のキャリアの通過点。
  2. 一定のスキルと経験を保証する意味はある。
  3. 3階部分の資格は、さらに高い手術技能の証明になると思われる。

参考になれば幸いです。

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